保育園に入れた人は、
どのランクだったのか
川崎市は、4月の一次利用調整で内定した方のうち最もランクが低かった世帯の値を、園ごと・クラス年齢ごとに公表しています。2年分・7区ぶんのPDFを全部読んで、3,132クラスぶんを数えました。内定が出たクラスの36.7%は「受入枠内」、つまり申し込んだ方が全員内定していました。いっぽうで、競争があったところの79.8%はAランクが下限でした。
この記事の内容
川崎市は「どのランクで入れたか」を出している
保活をしていると「うちのランクで入れるんだろうか」が最大の関心事になります。ランクは自分で計算できても、そのランクで足りるのかどうかは分からない。これがずっと不透明でした。
川崎市は、そこを公表しています。4月の一次利用調整で内定した方のうち、いちばんランクが低かった世帯の値を、園ごと・クラス年齢ごとに出している。「この園のこのクラスは、去年これくらいで内定が出ました」が分かります。
表記はランク-指数-調整項目点の順です。たとえば「A-6-2」ならランクA・指数6・調整項目点2。優先順位はこの3つを、ランク→指数→調整項目点の順に比べて決まります。調整項目点は「同ランク同指数となった場合の調整項目表」(別表3)によるもので、最後のタイブレークです。
そのほかに、こういう表示があります。
- 受入枠内 … 受入可能数より内定者が少なく、申し込んだ方が全員内定した
- 非公開 … 内定者が2名以下などで、個人が推定されるおそれがあるため市が伏せている
- A-7以上 … 下限が高いときの上限表示。実際の指数は分からない
- Hランク以下 … 育児休業の延長を許容した方などが内定した場合
- − … 内定者がいなかった、またはそのクラスがない
令和7年4月と令和8年4月の一次ぶん、7区で計14本。全部で3,132クラスぶんの結果が読み取れました。うち932クラスは非公開だったので、以下の集計からは外しています。
内定が出たクラスの36.7%は「受入枠内」だった
まず、いちばん意外だったところから。
結果が公表された2,200クラスのうち、807クラス(36.7%)が「受入枠内」でした。受入可能数より内定者のほうが少なかった、つまり申し込んだ方が全員入れたということです。
「保活は激戦」という言葉から受ける印象と、ずいぶん違います。3クラスに1つ以上は、ランクを気にする必要がなかった。
もちろん、これは「どこでもいい」場合の話です。人気のある園に絞れば話は変わります。ただ、選択肢を広げたときに何が起きるかは、この数字が示していると思います。
競争があったところは、79.8%がAランク
では、競争があった1,393クラスはどうだったか。下限のランクを数えると、こうなりました。
| 下限のランク | クラス数 | 割合 |
|---|---|---|
| Aランク | 1,111 | 79.8% |
| Hランク | 115 | 8.3% |
| Bランク | 58 | 4.2% |
| Cランク | 37 | 2.7% |
| Dランク | 29 | 2.1% |
| Eランク | 25 | 1.8% |
| Fランク | 18 | 1.3% |
Aランクが79.8%。川崎市のAランクは、両親ともに月20日以上・1日7時間以上の就労にあたります。「フルタイム共働きでないと厳しい」とよく言われますが、少なくとも競争があったクラスについては、そのとおりでした。
下限の具体的な値でいちばん多かったのはA-6-2(46.2%)、次がA-6-1(18.3%)です。
なお「Hランク以下」が8.3%あります。これは低いランクでも入れたという意味ではなく、育児休業の延長を許容すると答えた方などが内定した場合の表示です。数字の意味が違うので、ランクの比較には使えません。
年齢でまったく違う。1歳がいちばん厳しい
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。「受入枠内」の割合を年齢クラス別に出すと、まるで別の話になります。
| 0歳児 | 1歳児 | 2歳児 | 3歳児 | 4歳児 | 5歳児 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 結果が出たクラス | 739 | 907 | 186 | 217 | 79 | 72 |
| うち受入枠内 | 353 | 135 | 51 | 128 | 70 | 70 |
| 割合 | 47.8% | 14.9% | 27.4% | 59.0% | 88.6% | 97.2% |
1歳児だけが14.9%。0歳児の47.8%、5歳児の97.2%と比べると、明らかに1歳児だけが落ち込んでいます。
「0歳が激戦」という話をよく聞きますが、4月入園に限れば、いちばん厳しいのは1歳児でした。前回のレポート(No.07)で川崎市の申込・内定を月別に数えたときも、4月一次では0歳児がもっとも入りやすいという結果が出ています。別々のデータが、同じことを言っています。
なぜ1歳なのか
理由は、横浜市の調査を見るとはっきりします。横浜市が第3期の子ども・子育て支援事業計画をつくるときに実施したニーズ調査で、保育所等の利用率の10年変化が出ています。
| 保育所等の利用率(横浜市) | 2013年度 | 2023年度 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 0歳児 | 17.6% | 26.5% | +8.9pt |
| 1歳児 | 37.9% | 63.3% | +25.4pt |
| 2歳児 | 47.8% | 75.2% | +27.4pt |
横浜市の第3期子ども・子育て支援事業計画より。ニーズ調査(未就学児保護者)にもとづく数字です。
1歳児だけが37.9%から63.3%へ、25ポイント以上動いています。 0歳児は26.5%どまり。
育児休業を1年取って、1歳の4月に申し込む。この形が定着した結果、1歳の枠に人が集中しています。0歳で入れる家庭が増えたというより、0歳で申し込まなくなったと言うほうが近い。
同じ調査で、共働き世帯の割合は2013年度の40.8%から2023年度は68.6%へ、父親の育児休業取得率は4.2%から40.6%へと上がっています。10年で、保活の前提そのものが変わりました。
申し込む側は、どんな働き方をしているのか
ここまでは「内定した人」の話です。では申し込む側はどうなのか。川崎市が令和5年12月から令和6年1月にかけて実施した利用ニーズ調査(就学前児童の保護者7,763件・回答率51.75%)に、就労状況が出ています。
| 世帯の就労状況(川崎市・就学前児童) | 割合 |
|---|---|
| フルタイムで共働き | 56.8% |
| パートを含む共働き | 18.0% |
| 専業主婦(夫) | 23.1% |
川崎市「子ども・子育て支援に関する利用ニーズ調査報告書」(令和6年3月)。就学前児童の保護者7,763件・有効回答率51.75%。
母親はフルタイムが37.3%、これに産休・育休中のフルタイムを足すと58.4%。父親はフルタイムが97.4%です。
そして、ここからがランクの話につながります。同じ調査に、就労日数と就労時間の分布も載っています。
- フルタイムで共働きの母親は、就労日数「5日」が95.5%、就労時間は「8時間」が48.3%、「7時間」が21.6%
- パートを含む共働きの母親は、就労日数「5日」が43.2%、「4日」26.1%、「3日」17.8%。就労時間は「6時間」30.5%、「5時間」19.0%、「4時間」15.1%
川崎市のランクは、この就労日数と就労時間の組み合わせで決まります。つまりこの分布は、ランク分布そのものの分解にあたります。
フルタイムで共働きの世帯は、就労条件だけを見ればほぼ全員がAランクの水準に届いています。一方でパートを含む共働きの世帯は、日数・時間ともに幅が広く、Bランク以下に分かれます。就学前児童のいる世帯のうちフルタイム共働きは56.8%ですから、申請者のかなりの部分がAランクに集まり、そのなかで指数と調整項目点を競っている、という構図になります。
ここは推計です。ニーズ調査の対象は「就学前児童のいる世帯全体」で、実際に保育園に申し込んだ人ではありません。申し込んでいない世帯も含まれます。実測なのは、前半の内定下限ランクのほうだけです。
区による差と、2年の変化
「受入枠内」の割合は、区によって31%から48%まで開きます。同じ市の中でも、選択肢の広さがかなり違います。
年度で比べると、少しずつ良くなっています。
| 一次利用調整 | 結果が出たクラス | うち受入枠内 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月一次 | 1,065 | 373 | 35.0% |
| 2026年4月一次 | 1,135 | 434 | 38.2% |
35.0%から38.2%へ。1年で3.2ポイントぶん、ランクを気にせず入れるクラスが増えました。ただし2年ぶんの比較なので、傾向と言い切るには早いです。
横浜市は、この結果を公表していない
ここまで川崎市の話ばかりしてきたのは、横浜市が園ごとの内定下限ランクを公表していないからです。探した範囲では見つかりませんでした。
横浜市も利用調整の基準(ランクA〜Iと調整指数)は公開していますし、入所状況の月次データも出しています。ただ「実際にどのランクで内定が出たか」は、いまのところ分かりません。
これは制度の良し悪しというより、公開の仕方の差です。川崎市が出しているものは、保活をする人にとってかなり実用的です。横浜市も同じものを出してくれたら、多くの人が助かると思います。
この数字の限界
最後に、この記事の数字で言えないことを書いておきます。
- 下限であって、平均でも保証でもありません。 川崎市自身が「表に示すランク等を満たす方の内定を保障するものではありません」と明記しています。最後に滑り込んだ1世帯の値です
- 非公開が932クラスあります。 内定者が2名以下の場合は伏せられるので、小さい園ほど見えません。見えている範囲に偏りがあります
- 4月の一次だけです。 二次調整と年度途中は含みません。年度途中の状況はNo.07に書きました
- 2年分だけです。 傾向を語るには短い
- きょうだい同時申請や育休延長の許容など、表に表れない事情があります。 下限を満たしていても保留になる場合があると、市が注記しています
それでも、「自分のランクで、去年はどこに内定が出ていたのか」を知れるかどうかは、保活の進め方をかなり変えると思います。第一希望を1つ決めて祈るのと、届く可能性のある園を10園並べてから見学の順番を決めるのとでは、やることが違ってきます。
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この記事の数字は、サイトにも入れました。川崎市の園のページには園ごとの内定下限ランクを、ランク診断のタブには「あなたのランクで、去年は内定が出ていた園」を出しています。
出典: 川崎市「保育所等の内定下限ランク等について」(令和7年4月・令和8年4月の一次利用調整結果)/川崎市「子ども・子育て支援に関する利用ニーズ調査報告書」(令和6年3月)/横浜市「こども、みんなが主役!よこはまわくわくプラン(第3期横浜市子ども・子育て支援事業計画)」。いずれも公開データを加工して作成しています。