データレポート 09

共働き世帯あたりの保育園の枠は、
区で7倍ちがう

このサイトは「いま何枠空いているか」を毎月出しています。でもその区に何世帯が待っているのかは、ずっと持っていませんでした。分母がないまま「空き10枠」と言っても、それが多いのか少ないのか分かりません。国勢調査から区別の共働き世帯数を取り出して、その分母を埋めました。共働き100世帯あたりの空き枠は、横浜南区の1.54から横浜神奈川区の10.80まで7.0倍ちがいました。

2026年9月1日公開 / 横浜・川崎保活マップ 運営者

この記事の内容

  1. 空き枠だけ見ていても、分からないこと
  2. 国勢調査には、区ごとの共働き世帯数がある
  3. 共働き率は、区で12.8ポイントちがう
  4. 共働き100世帯あたりの枠は、7.0倍ちがう
  5. 共働きが多い区ほど、枠も多い。ただし揃っていない
  6. 待っている人の数は「率」では決まらない
  7. 需要に対して、枠が薄い区
  8. 25区の全数値
  9. この数字の限界

空き枠だけ見ていても、分からないこと

このサイトを作ってから、ずっと引っかかっていたことがあります。

「A区は空き枠が30、B区は10」と出せても、それが入りやすさを意味するとは限らない。A区の子育て世帯がB区の5倍いれば、話は逆になります。分母を持っていなかったので、そこを言えませんでした。

入所待ちの人数は市が公開しているので、それを使えばいいと思うかもしれません。ただこれは「申し込んだ人」の数で、その区にどれだけ保育を必要とする世帯があるかとは別です。申し込みを諦めた人も、まだ産まれていない子の親も入りません。

必要なのは、もっと手前の分母です。その区に、小さい子がいて、夫婦とも働いている世帯が何世帯あるか。

国勢調査には、区ごとの共働き世帯数がある

国勢調査の第25-1表が、まさにそれを持っていました。

この表は市区町村ごとに「夫婦のいる一般世帯」を、最年少の子の年齢(各歳)× 夫の労働力状態 × 妻の労働力状態で集計しています。政令市の区も「市区町村」に含まれるので、横浜18区・川崎7区がそれぞれ取れます。

ここから「最年少の子が0〜5歳で、夫が就業者かつ妻が就業者の世帯」を抜き出しました。25区あわせて、0〜5歳の子がいる夫婦世帯は180,689世帯。そのうち共働きは86,561世帯です。

供給側は当サイトのデータを使いました。認可保育所等の受入可能数を0〜5歳ぶん合計し、区ごとに直近12か月の月平均を取っています(横浜市 2025-07〜2026-07、川崎市 2025-11〜2026-10)。25区あわせて月平均5,461枠でした。

1か月の断面ではなく12か月平均にしたのは、受入可能数が月でかなり動くからです。4月に埋まって年度末に空く、という周期があるので、1か月だけ見ると区の順位が入れ替わります。

共働き率は、区で12.8ポイントちがう

まず分母そのものを見ます。0〜5歳の子がいる夫婦世帯のうち、夫婦とも働いている割合です。

0〜5歳の子がいる夫婦世帯のうち、夫婦とも就業している割合令和2年国勢調査(2020年10月)/長いほど共働きが多い川崎幸区55.6%川崎中原区53.1%横浜西区52.3%横浜港北区51.3%川崎多摩区50.8%横浜神奈川区50.0%横浜鶴見区48.6%川崎高津区48.4%横浜磯子区47.9%横浜戸塚区47.6%横浜泉区47.4%横浜緑区47.3%横浜金沢区46.6%川崎川崎区46.1%川崎宮前区45.9%横浜保土ケ谷区45.8%横浜旭区45.6%横浜港南区45.5%川崎麻生区45.3%横浜都筑区45.2%横浜青葉区44.7%横浜栄区44.7%横浜中区43.6%横浜南区43.6%横浜瀬谷区42.8%

いちばん高いのが川崎幸区の55.6%、低いのが横浜瀬谷区の42.8%。差は12.8ポイントあります。

市全体では川崎市49.6%、横浜市47.1%で、川崎のほうが高い。上位は都心へのアクセスがいい区が並びます。

個人的にいちばん意外だったのは青葉区でした。子育て世帯が多いイメージの区ですが、共働き率で見ると下位です。世帯の数が多いことと、共働きの割合が高いことは、別の話でした。

共働き100世帯あたりの枠は、7.0倍ちがう

分母と供給を割ります。共働き100世帯あたり、月平均で何枠空いているか。

いちばん厚いのが横浜神奈川区の10.80枠、薄いのが横浜南区の1.54枠7.0倍の差です。

枠の数そのものではなく、待っている世帯に対する枠の厚さで見ると、区の並びが変わります。園数が多い区が有利とは限りません。

共働きが多い区ほど、枠も多い。ただし揃っていない

ここで気になるのは、行政が需要を見て整備しているのかどうかです。共働きが多い区に枠が多ければ、見ていることになります。

共働きが多い区ほど、枠も多い傾向はある横軸: 0〜5歳の子がいる夫婦世帯の共働き率 縦軸: 共働き100世帯あたりの空き枠02468101241%43%45%47%49%51%53%55%57%神奈川区西区南区戸塚区横浜市川崎市

相関係数は横浜市 0.46、川崎市 0.41。どちらも正で、共働きが多い区ほど枠も厚い傾向はあります。整備が需要を無視しているわけではない、というのは正直なところ意外でした。

ただ0.5前後なので、揃っているとは言えません。図を見ると、同じ共働き率でも枠の厚さが3倍ちがう区が並んでいます。傾向はあるが、個別にはかなりばらついている、という読み方が正確です。

待っている人の数は「率」では決まらない

では、実際に待っている人の多さは何で決まるのか。ここは市ごとに分けて見る必要があります。横浜市の「入所待ち人数」と川崎市の「申請数」は別の指標なので、混ぜて計算すると意味のない数字になります。

相関係数横浜市・入所待ち
(18区)
川崎市・申請数
(7区)
共働き「率」との相関0.170.61
共働き世帯「数」との相関0.750.78
園数との相関0.800.70

はっきりしています。待っている人の多さは共働き率ではなく、共働き世帯の「数」でほぼ決まる(0.75/0.78)。園数との相関も同じくらい高いですが、これは「大きい区は園も人も多い」という規模の効果です。

実用的な結論はこうです。「共働き率が低い区だから空いている」は成り立ちません。 率が低くても世帯数が多い区では、待っている人は多い。逆に率が高くても小さい区なら、待っている人は少ない。率は「枠の厚さ」を見るときの分母として使うもので、混雑の予想には使えません。

需要に対して、枠が薄い区

共働きの多さの順位と、枠の厚さの順位を比べると、そのズレが「需要に対して枠が足りているか」の目安になります。ズレが大きい区から並べます。

逆に、共働きの割合はそれほど高くないのに枠が厚い区もあります。

これは「行政が手を抜いている」という話ではありません。用地が取れるか、事業者が来るか、既存園がどれだけあるかで、整備のしやすさは区ごとにまったく違います。ここで言えるのは結果としてこうなっているということだけです。

25区の全数値

共働き100世帯あたりの枠が多い順です。

共働き率共働き世帯園数空き枠
(月平均)
共働き100
世帯あたり
横浜神奈川区50.0%4,0789244010.80
横浜西区52.3%1,9014119410.19
横浜中区43.6%1,743431619.24
川崎高津区48.4%4,391944059.22
横浜保土ケ谷区45.8%2,759582428.79
川崎中原区53.1%6,1761235198.40
横浜港北区51.3%7,1461635447.62
横浜青葉区44.7%4,703923377.16
川崎多摩区50.8%3,845752737.09
川崎幸区55.6%4,190772936.99
川崎宮前区45.9%4,255802756.46
川崎麻生区45.3%2,837531786.29
川崎川崎区46.1%3,243741875.76
横浜緑区47.3%2,999641725.72
横浜鶴見区48.6%5,2351102935.60
横浜瀬谷区42.8%1,46836755.09
横浜泉区47.4%2,18247934.26
横浜磯子区47.9%2,505511044.14
横浜都筑区45.2%3,709691534.12
横浜旭区45.6%3,268761314.02
横浜金沢区46.6%2,524451014.01
横浜港南区45.5%2,818691023.62
横浜栄区44.7%1,52632412.69
横浜戸塚区47.6%4,7961051132.35
横浜南区43.6%2,26449351.54

この数字の限界

この記事の数字で言えないことを書いておきます。

それでも、分母を持てたのは大きいと思っています。「空きが10ある」と「共働き100世帯あたり1.5枠しかない」は、同じ事実の別の言い方です。後者のほうが、自分がどこに並んでいるのかが分かります。

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区ごとの空き状況は、地図と区のページで毎月更新しています。この記事の分母(共働き世帯数)は5年に1度しか動きませんが、枠のほうは毎月変わります。

地図で見る

出典: 総務省統計局「令和2年国勢調査 就業状態等基本集計 第25-1表(夫婦のいる世帯の家族類型,子供の有無,最年少の子供の年齢(各歳),夫の労働力状態,妻の労働力状態別一般世帯数)」(e-Stat 政府統計の総合窓口)/横浜市「保育所等の入所状況」/川崎市「保育所等の受入可能児童数・利用調整結果」。いずれも公開データを加工して作成しています。